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環境衛生について

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●環境衛生と感染対策

医療施設の環境中には様々な微生物が存在します。なかには医療関連感染と関わる微生物も存在します。環境整備の基本は清掃ですが、近年は環境を介して微生物が伝播することもわかっているため、必要に応じて環境表面の消毒を行うことも重要です。特に多剤耐性緑膿菌、多剤耐性アシネトバクター、ノロウイルス、クロストリジウム・ディフィシルなどに対しては環境消毒の必要性が指摘されています。ただし、毒性があるため高水準消毒薬を用いた環境消毒は不要です。

表1.医療関連感染で問題となる主な微生物

微生物 生存期間の目安※ 生存環境(例) 特徴
アシネトバクター・バウマニ 乾燥表面上の生存期間:3日~5ヶ月間
  • 土壌等の湿潤環境(ただし乾燥した環境でも生存できる)
  • 人工呼吸器等の医療器具

など

  • 通常は無害な日和見感染起因菌だが、血管留置カテーテルに関連した敗血症や尿路カテーテルに関連した尿路感染症、人工呼吸器関連の肺炎などを起こす
  • 多剤耐性菌の出現が問題となっており、汚染された経腸栄養剤による感染例などがある
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA) 乾燥表面上の生存期間:7日~7ヶ月
  • 皮膚
  • 腸管
  • 手指の高頻度接触面

など

  • 黄色ブドウ球菌が薬剤耐性化したもので、通常健常者に感染症を起こすことは少なく定着のみの場合が多いが、易感染患者に感染すると重症化する場合がある
  • 感染者の手指等により汚染された周辺環境に触れた手指を介した感染例などがある
  • 抗菌薬に耐性を示す
バンコマイシン耐性腸球菌(VRE) 乾燥表面上の生存期間:5日~4ヶ月
  • 腸管
  • 手の高頻度接触面

など

  • バンコマイシンに対し耐性を獲得した腸球菌で、通常定着していても感染症を起こすことは少ないが、易感染患者に感染すると重症化する場合がある
  • 国内の感染例は稀だが、欧米では問題になっている
  • 抗菌薬に耐性を示す
クロストリジウム・ディフィシル 乾燥表面上の生存期間:5ヶ月
  • 腸管
  • ふん便
  • 手指の高頻度接触面

など

  • 腸管に生息する細菌であり、通常健常者には無害だが、抗菌薬投与により、しばしば偽膜性大腸炎の原因となる
  • 汚染された手指や医療器具等を介した感染例がある
  • 熱やアルコールに抵抗性を示す
緑膿菌 乾燥表面上の生存期間:6時間~16ヶ月(乾燥表面では5週間)
  • 腸管
  • 湿潤環境(洗面所、流し台など)
  • カテーテル
  • ネブライザー
  • 手指の高頻度接触面

など

  • 通常は無害な日和見感染起因菌だが、易感染患者に感染すると尿路感染症、創感染症、呼吸器感染症、敗血症などを起こす
  • 汚染されたカテーテル、尿検査用の機器類のタッチパネル、ネブライザーなどを介した感染例がある
  • 抗菌薬に対し自然耐性を示す傾向が強く、最近、カルバペネム耐性に関わるメタロ-β-ラクタマーゼ産生菌が増加している
セラチア菌 乾燥表面上の生存期間:3日~2ヶ月(乾燥表面では5週間)
  • 腸管
  • 湿潤環境(洗面所、流し台など)
  • 経腸栄養剤
  • カテーテル
  • 消毒液

など

  • 通常は無害な日和見感染起因菌だが、易感染患者に感染すると尿路感染症、創感染症、呼吸器感染症、敗血症、髄膜炎などを起こす
  • 汚染された輸液や薬液、経腸栄養剤、カテーテル、消毒液などを介した感染例がある
  • 最近、カルバペネム耐性に関わるメタロ-β-ラクタマーゼ産生菌が増加している
ノロウイルス 乾燥表面上の生存期間:8時間~7日
  • ふん便
  • 手の高頻度接触面

など

  • 感染性胃腸炎の原因となるウイルスである
  • 患者排泄物、汚染された手指や飲食物(二枚貝等)を介した感染例がある
  • アルコールに抵抗性を示す

※生存期間の目安は、文献データを検索・評価した結果、得られた目安です。

●具体的な清掃方法

清掃は、湿式清掃により汚れを除去することが基本です。

日常清掃の基本事項

  • きれいな場所から汚い場所へ、部屋の奥から出口に向かって行う。
  • 埃を立てないように湿式清掃を行う。
  • 一方向へ拭き取る。
  • 目に見える汚れは確実に除去する。
  • 血液等が付着している場合は、汚染部位を広げないように汚れを拭き取り消毒する。

環境からの感染の多くは手指を介して起こります。そのため、手指の接触頻度に応じた清掃が重要です。床や壁、天井などの医療従事者や患者が直接接触する頻度が低い部分と、ドアノブやベッド柵、オーバーテーブルなどの直接接触する頻度が高い部分とに分けて考える必要があります。高頻度接触面は汚染されやすいため定期的に清掃し、必要に応じてアルコールなどで消毒します。

表2.手指の接触頻度と清掃の処置

接触
頻度
分類 処置

医療機器表面 透析装置のハンドルやノブ、X線機器、器具のカートなど 定期的清掃
汚染時の除染
カバーで覆う等
  手指の高頻度接触面 ドアノブ、スイッチ、ベッド棚、オーバーテーブル、トイレ周辺の壁など 定期的清掃
汚染時の除染
退院時の清掃
手指の低頻度接触面 水平
表面
床、窓の敷居など 定期的清掃
汚染時の除染
退院時の清掃
垂直
表面
壁、ブラインド、カーテンなど 汚染時のみ

手指の接触頻度の低い環境 (床や壁など)の場合、床は定期的に除菌洗浄剤(プロベストなど)や0.05~0.2%両性界面活性剤で清掃します。
壁やカーテン等の垂直表面は目に見える汚染がある場合のみ清掃を行います。
手指の接触頻度の高い環境 (ドアノブ、キーボードやマウスなど)の場合、除菌洗浄剤(プロベスト、環境清拭クロスなど)、アルコール(エタノールクロス80、サニクイックなど)や0.05~0.2%両性界面活性剤でこまめに清掃します。
血液や体液などによる汚染がある場合は、汚染局所の清拭除去および次亜塩素酸ナトリウムによる消毒が必要です。その際は、必ず手袋などの個人防護具を着用することが重要です。

【医療施設における環境感染管理のためのCDCガイドライン2003の勧告】

患者ケア区域の環境表面のための清掃と消毒

  • 広い範囲の環境表面を消毒する場合は、アルコールを使用しない。
  • 通常掃除を行う表面(床、壁、オーバーテーブルなど)は、常に目で見て清潔に保つ。また水がこぼれた際は速やかに掃除する。
  • よく触れる環境表面(ドアノブ、ベッド柵、ライトのスイッチ、病室のトイレの中やその周りの表面など)は、あまり触れないところより頻繁に清掃・消毒する。
  • モップや布切れは使用後きれいにし、次の使用までに乾かすこと。あるいは単回使用のディスポーザブル仕様の製品を使用する。

特別な病原菌

  • 環境表面には高水準消毒薬(液体状の化学滅菌薬など)は使用しないこと。そういった使用は有毒性のため記載事項に即していない。

【厚生労働省通知「医療機関等における院内感染対策について」(平成23年6月17日医政指発0617第1号)】(抜粋)

環境整備と環境微生物調査

  • 空調整備、給湯設備等、院内感染対策に有用な設備の適切な整備や、院内の清掃などを行い、院内の環境管理を適切に行うこと。
  • 環境整備の基本は清掃であるが、その際一律に広範囲の環境消毒を行わないこと。血液もしくは体液による汚染がある場合は、汚染局所の清拭除去及び消毒を基本とすること。
  • ドアノブ、ベッド柵など、医療従事者や患者が頻繁に接触する箇所については、定期的に清拭し、必要に応じてアルコール消毒等を行うこと。
  • 多剤耐性菌感染患者が使用した病室等において消毒薬による環境消毒が必要となる場合は、生体に対する毒性等がないように配慮すること。消毒薬の噴霧、散布、薫(くん)蒸や紫外線照射などは効果が不確実であるだけでなく、作業者への危険性もあることから、これらの方法については、単に病室等を無菌状態とすることを目的として漫然と実施しないこと。
  • 近年の知見によると、粘着マット及び薬液浸漬マットについては、感染防止効果が認められないことから、原則として、院内感染防止の目的としては、これらを使用しないこと。
  • 近年の知見によると、定期的な環境微生物検査は必ずしも施設の清潔度の指標とは相関しないことから、一律に実施するのではなく、例えば、院内感染経路を疫学的に把握する際に行う等、必要な場合に限定して実施すること。

●関連商品

  • プロベスト
    第四級アンモニウム塩、両性界面活性剤配合で、洗浄と除菌が同時にできる希釈タイプの医療施設用環境除菌洗浄剤です。
  • サニクイック
    79.1v/v%エタノール、第四級アンモニウム塩配合で、手間なく除菌ができる原液使用の医療施設用環境アルコール除菌剤です。
  • サラヤ環境清拭クロス
    第四級アンモニウム塩、界面活性剤配合で、洗浄と除菌が同時にできる中性タイプの厚手の除菌クロスです。
  • サラヤエタノールクロス80
    高濃度エタノール含有で、幅広い抗菌スペクトルを示す厚手の除菌クロスです。
  • 便座きれいくんNV
    エタノールを主成分とした便座除菌クリーナーです。トイレットペーパーにつけてサッと拭き、トイレットペーパーはそのままトイレに流せます。


●参考

1) 厚生労働省通知別記:医療機関等における院内感染対策に関する留意事項(平成23年6月17日) 【PDF】
2) CDC. Guidelines for Environmental Infection Control in Health-Care Facilities. 【PDF】
3) Kramer A, Schwebke I, Kampf G.How long do nosocomial pathogens persist on inanimate surfaces? A systematic review. BMC Infectious Diseases. 2006,6:130