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眼科領域の感染対策

眼科領域で特に問題とされる病原微生物に、流行性角結膜炎を引き起こすアデノウイルス、急性出血性結膜炎を引き起こすエンテロウイルスなどがあります。流行性角結膜炎は爆発的に拡大しやすく、ひとたびアウトブレイクが起こると終息させることが困難なため、診療機能の麻痺につながる場合があります。眼科領域では患者の粘膜を直接触る機会が多く、また眼科医療器具は構造が複雑で微細なものが多く再生処理が困難なことから、医療従事者・患者ともに感染のリスクが高く、高度な感染対策が求められます。
感染を予防するために、日頃から手指衛生の遵守、個人防護具の着用、適切な医療器具の再生処理、環境衛生などの基本的な感染対策を徹底することが重要です。

下記のような対策は十分ですか?

手指衛生

  • 手指消毒剤を適切に配置していますか。
  • 患者ごと・処置ごとに手指衛生を行っていますか。
  • 手洗いと手指消毒の使い分けを理解していますか。

PPE(個人防護具)

  • 医師・スタッフは、業務内容に応じた個人防護具を適切に着用していますか。
  • 患者ごと・処置ごとに手指衛生を行っていますか。
  • 手洗いと手指消毒の使い分けを理解していますか。

医療器具の再生処理

  • 感染症患者に使用した医療器具をすぐに消毒液に浸漬していませんか。
  • スポルディングの分類に応じて適切な処理を選択していますか。
  • 消毒薬で消毒した医療器具は十分にすすぎを行っていますか。
  • 眼科マイクロ手術器械の洗浄方法を確立していますか。

環境衛生

  • 手指のよく触れる環境表面は定期的に清掃していますか。
  • 感染症患者のトリアージ、待機場所の確保、必要に応じて環境消毒を行っていますか。
  • 環境整備に適切な薬剤を使用していますか。

1.手指衛生

微生物は手指を介して伝播されることが多いため、手指衛生は感染対策の基本となります。
目に見える汚れがある場合は、流水と普通石けん(または抗菌石けん)で手洗いを行います。
目に見える汚れがない場合は、速乾性アルコール製剤による手指消毒を行います。

表1 手指衛生の方法と使用薬剤など

方法 手指衛生剤 サラヤ対象商品例 目的 適応
日常手洗い 流水と普通石けん 汚れや一部の通過菌の除去
  • トイレの使用後
  • 食事の前

など

衛生手洗い 速乾性アルコール製剤 通過菌のすべてを除去する
  • 患者のケア前後
  • 手袋を着用する前
  • 手袋を外した後

など

流水と普通石けん
流水と抗菌石けん
  • スクラビイン4%液
  • スクラビインS4%液
衛生手洗い 流水と抗菌石けん
  • スクラビイン4%液
  • スクラビインS4%液
通過菌のすべてを除去し、常在菌をできるだけ除去する
  • 外科処置を行うために滅菌済み外科用手袋を着用する前

など

流水と普通石けん、その後、持続活性のある速乾性アルコール製剤

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2.PPE(個人防護具)

個人防護具を正しく着用することは、医療従事者と患者を感染から守ることにつながります。血液や体液、損傷した皮膚、粘膜などの湿性生体物質に触れる場合や飛散が予測される場合は、処置ごとに適切な個人防護具を着用し、防御することが大切です。環境整備や医療器具の再生処理の際も適切な個人防護具を着用します。
各処置に応じた個人防護具の着用例を下記に示します。

処置別 個人防護具の着用(例)

手袋・マスク 手袋・マスク・エプロン 手袋・マスク・ガウン・ゴーグル 手袋・マスク・ゴーグル・キャップ・ガウン

関連サイト

サラヤの医療従事者向けサイト”Medical SARAYA”では、「個人防護具(PPE)のススメ」で個人防護具の解説や処置別の着用例などを紹介しています。

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3.医療器具の再生処理

医療器具は、使用用途に伴う感染のリスクレベルによってクリティカル、セミクリティカル、およびノンクリティカルに分類されます(スポルディングの分類)。クリティカル器具は滅菌、セミクリティカル器具は高水準消毒または中水準消毒以上、ノンクリティカル器具は洗浄または低水準消毒以上の処理を行うことが原則とされています。

表2 スポルディングの分類と必要な処理

カテゴリー 定義 処理 サラヤ対象商品例 眼科器具・物品
クリティカル
(critical)
通常無菌の組織や血管に挿入されるもの 滅菌
  • アセサイド6%消毒剤
    (過酢酸)(10分間)※
手術器具、穿刺・縫合など観血的な処置に使用される器具 など
セミクリティカル
(semicritical)
損傷の無い粘膜および創のある皮膚に接触するもの 高水準消毒
または
中水準消毒
  • アセサイド6%消毒剤
    (過酢酸)(5分間)※
  • ヤクラックスD液1%
    (次 亜塩素酸ナトリウム)
  • 消エタサラコール(エタノール)
  • 熱水消毒(80℃・10分など)
人工呼吸器、麻酔器回路、スリーミラーレンズ、 バイトブロック、ネブライザーなど 
ノンクリティカル
(noncritical)
損傷の無い皮膚と接触するもの 洗浄
または
低水準消毒
指示棒、検眼鏡、膿盆、屈折検査用機器本体、ガーグルベースン など
※一部、材質の適合性がないものもあります。

洗浄

医療器具の再生処理を行う際は、消毒・滅菌処理の前にまず十分な洗浄が必要です。一般的に消毒対象物に血液などの汚れが付着していると、消毒薬の効果を減弱させたり、滅菌不良の原因となります。洗浄剤を選定する際は、それぞれの特徴を理解し、材質への影響、汚染物質の種類などを十分考慮する必要があります。中性の酵素系洗浄剤は各種金属やゴム、プラスチックなどに対する腐食性が比較的弱いことから、広い用途で使用可能です。また、皮膚や環境に対する影響が少ないことから用手洗浄におすすめです。アルカリ洗浄剤は皮膚への影響があるため用手洗浄に不向きですが、洗浄力が優れており超音波洗浄機やWDでの使用に最適です。

マイクロ手術器械の洗浄

眼科のマイクロ手術器械は微細で繊細なため、一般的に超音波洗浄機やWDによる洗浄は不向きであり、用手洗浄または浸漬洗浄が最適です。眼科マイクロ手術器械はやわらかいスポンジなどで丁寧に手洗いします。また、専門容器に入れ、恒温槽などを用いて40℃・酵素系洗浄剤に30分間浸漬洗浄する方法も、効果的で、煩雑な操作手技が不要です。

関連サイト

Medical SARAYAでは、眼科のマイクロ手術器械など医療器具の再生処理方法の教育用動画を用意しています。(会員様専用)

※まだMedical SARAYAの会員でない方はこちらよりご登録ください。


消毒

消毒は、消毒薬を用いる化学的消毒法と熱水(80℃・10分など)を用いる物理的消毒法があります。耐熱性のある医療器具の消毒は熱水消毒が第一選択となります。熱水を用いた消毒法は効果的かつ経済的で、消毒薬のように残留毒性を配慮する必要がないため安全な方法です。消毒薬を用いて眼粘膜に接触する器具を消毒した場合、消毒薬が残留していると眼に化学損傷を生じる可能性があるため、十分にすすぎを行うことが大切です。

滅菌

滅菌には、オートクレーブ、酸化エチレンガス滅菌、過酸化水素低温ガスプラズマ滅菌、化学的滅菌などがあります。オートクレーブは操作性が高く、残留毒性がないため、滅菌条件に耐えられる器具であれば最も安全で確実な方法です。

表3 主な眼科用医療器具の再生処理方法(例)

手術器具(眼科剪刀、細部用剪刀、ピンセットなど)、睫毛鑷子、涙洗針、硝子棒

1.洗浄

  • 超音波洗浄
  • WD洗浄
  • 用手洗浄※

2.乾燥・包装

3.滅菌

  • オートクレーブ
※鋭利な医療器具は切創防止のため用手洗浄よりもWDの使用が望ましい。

スリーミラーレンズ

1.洗浄

  • 超音波洗浄
  • WD洗浄
  • 用手洗浄

2.消毒※

  • 0.05%次亜塩素酸ナトリウムに30分以上浸漬後、十分すすぐ
  • エタノールに30分以上浸漬

3.乾燥

※スリーミラーレンズは、本来高水準消毒が必要だが、眼粘膜に接触するため中水準消毒薬など安全な方法を選択。

洗眼器、洗眼受水器

1.洗浄

  • 超音波洗浄
  • WD洗浄
  • 用手洗浄

2.消毒

  • 熱水消毒(80℃・10分)
  • 0.05%次亜塩素酸ナトリウムに30分以上浸漬後、十分すすぐ
  • エタノールに30分以上浸漬

3.乾燥


検眼鏡、指示棒

1.洗浄※

  • 超音波洗浄
  • WD洗浄
  • 用手洗浄

2.乾燥

※消毒を行う場合は、洗浄後、エタノールで清拭し、乾燥。

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4.環境衛生

環境衛生の基本は清掃です。微生物は環境を介して伝播する可能性があるため、環境表面の清掃・消毒を行うことが重要です。吸入毒性などの問題から高水準消毒薬を用いた環境消毒は不要です。血液もしくは体液による汚染がある場合は、汚染局部の清拭除去及び次亜塩素酸ナトリウムによる消毒を行います。
流行性角結膜炎の患者が来院した際の環境消毒はもちろん、日常診療のなかでは流行性角結膜炎とはっきり診断されない感染患者も多く、知らぬ間に感染が拡大する危険性があるため、日頃からこまめな清掃・消毒を心がけましょう。特に、手指の高頻度接触面はあまり触れないところより頻回に清掃・消毒することが大切です。

環境表面に使用する薬剤

環境表面に対して使用する薬剤は、洗浄効果、除菌効果、手間、コストなどを考慮して適切なものを選びましょう。
除菌洗浄剤(サラヤ環境清拭クロスプロベスト)は、洗浄効果と除菌効果を併せもつため、薬剤を使い分ける手間やコストを考慮すると実用的です。一方、アルコール製剤(サラヤエタノールクロス80サニクイック)は、洗浄効果はありませんが、速乾性がある・残留毒性がない・抗菌スペクトルが広いなどの特徴があり、直接体表が触れるものや早く乾燥すると便利なものの消毒に適しています。また、不衛生になりがちな清掃用具(雑巾等)の洗濯や管理の手間を考慮すると、除菌洗浄剤やアルコール製剤を含浸させた使い捨ての不織布(サラヤ環境清拭クロスアルガーゼ)が衛生的で便利です。

表4 環境表面と使用薬剤(例)

環境表面 サラヤ対象製品
コンピューターのキーボード、マウス など
スリット台、診療台、医療機器、ドアノブ、電気のスイッチ、引き出しの取っ手、イス など

待合室の備品

複数の患者が手にとって共用する雑誌・新聞は、消毒を行うことが難しく、微生物を伝播させる媒体となる可能性があるため待合室に置かないようにします。やむをえず共用の雑誌・新聞を置く場合は、利用後の手指衛生を励行しましょう。また、日常の清掃をスムーズに行うために、待合室や治療エリアなどに不要な装置や備品を置かないようにしておくことが大切です。

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5.流行性角結膜炎(アデノウイルス)対策

アデノウイルスはエンベロープを持たないウイルスのため消毒薬抵抗性が比較的高く、次亜塩素酸ナトリウム・高水準消毒薬・滅菌が有用です。アルコールの場合は十分な接触時間が必要です。アデノウイルスは51種類の血清型が知られており、流行性角結膜炎を引き起こすアデノウイルスの血清型は、8・19・37型です。流行性角結膜炎の感染経路は主に手指、医療器具、環境表面を介した接触感染です。ドアノブ、眼圧計、スリーミラーレンズ、共用の洗眼受水器などを介してアデノウイルスが伝播した事例が報告されています。特に涙液、眼脂は感染リスクが高いため、これらの物質や結膜に触れる前後の手指衛生は重要です。眼圧計のチップ、拭き綿、点眼瓶など涙液に触れるものは個人ごとの使い捨てが望ましく、ディスポーザブル製品の再使用は行いません。
流行性角結膜炎の患者が来院した場合は、患者が触れたドアノブや使用した診察台、椅子など汚染の可能性のある環境表面を消毒することが必要です。また、感染拡大を防止するために、流行性角結膜炎の患者は他の患者と接触しないように先に診察を受けてもらう(トリアージ)、待合室と別の部屋で待機してもらう、専用の診察台を使用することなども重要です。

表5  アデノウイルスに効果的な消毒

  消毒薬 サラヤ対象商品例 備考
手指 アルコール手指消毒剤 80%エタノール含有速乾性手指消毒薬が有効
※ただし十分な擦り込み時間が必要
※殺ウイルス活性の実証された手指消毒剤に
よる手指消毒も有用⇒ウィル・ステラVH
※手指消毒前に、石けんと流水による手洗いを
行うとさらに効果的
器具 グルタラール   粘膜刺激があるので消毒後、十分なすすぎが必要
フタラール   消毒後、十分なすすぎが必要
過酢酸
  • アセサイド6%消毒剤
消毒後、十分なすすぎが必要
次亜塩素酸ナトリウム
  • ヤクラックスD液1%
残留性は低いが、消毒後、十分なすすぎが必要
エタノール
  • 消エタサラコール
清拭の際は、2度拭きを行う
熱水消毒   器具の耐熱性に注意する
環境 次亜塩素酸ナトリウム
  • ヤクラックスD液1%
消毒対象の材質劣化に注意する
エタノール 2度拭きを行う

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6.眼科医院におけるサラヤ商品のご提案

院内に衛生用品を設置する場合は人の動線を考え、効率のよい配置と収納を工夫する必要があります。
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トイレ
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手術室

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7.参考