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耳鼻科領域の感染対策

耳鼻科領域で特に問題とされる病原性微生物に、中耳炎・副鼻腔炎の起因菌である肺炎球菌・インフルエンザ菌・黄色ブドウ球菌、MRSAなどがあります。耳鼻科領域では、耳漏などの感染症を扱う機会が多く、また使用頻度が高い内視鏡やネブライザーなどは汚染されやすいため、耳鼻科医療従事者・患者ともに感染対策が重要です。
感染を予防するために、日頃から手指衛生の遵守、個人防護具の着用、適切な医療器具の再生処理、環境衛生などの基本的な感染対策を徹底することが重要です。

下記のような対策は十分ですか?

手指衛生

  • 手指消毒剤を適切に配置していますか。
  • 内視鏡検査や処置の前後に手指衛生を行っていますか。
  • 手洗いと手指消毒の使い分けを理解していますか。

PPE(個人防護具)

  • 医師・スタッフは、業務内容に応じた個人防護具を適切に着用していますか。
  • 手袋は患者ごと・処置ごとに新しいものに取り替えていますか。
  • 作業エリアを離れる際には全ての個人防護具を取り外していますか。

医療器具の再生処理

  • 感染症患者に使用した医療器具をすぐに消毒液に浸漬していませんか。
  • スポルディングの分類に応じて適切な処理を選択していますか。
  • 消毒薬で消毒した医療器具は十分にすすぎを行っていますか。

環境衛生

  • 手指のよく触れる環境表面は定期的に清掃していますか。
  • 目に見える汚染がある場合はその都度清掃・消毒していますか。
  • 環境整備に適切な薬剤を使用していますか。

1.手指衛生

微生物は手指を介して伝播されることが多いため、手指衛生は感染対策の基本となります。
目に見える汚れがある場合は、流水と普通石けん(または抗菌石けん)で手洗いを行います。
目に見える汚れがない場合は、速乾性アルコール製剤による手指消毒を行います。
速乾性アルコール製剤は、ユニットの上など使いやすい場所に置いて、いつでもすぐに手指衛生が行えるようにしましょう。

表1 手指衛生の方法と使用薬剤など

方法 手指衛生剤 サラヤ対象商品例 目的 適応
日常手洗い 流水と普通石けん 汚れや一部の通過菌の除去
  • トイレの使用後
  • 食事の前

など

衛生手洗い 速乾性アルコール製剤 通過菌のすべてを除去する
  • 患者のケア前後
  • 手袋を着用する前
  • 手袋を外した後

など

流水と普通石けん
流水と抗菌石けん
  • スクラビイン4%液
  • スクラビインS4%液
衛生手洗い 流水と抗菌石けん
  • スクラビイン4%液
  • スクラビインS4%液
通過菌のすべてを除去し、常在菌をできるだけ除去する
  • 外科処置を行うために滅菌済み外科用手袋を着用する前

など

流水と普通石けん、その後、持続活性のある速乾性アルコール製剤 通過菌のすべてと常在菌の一部を除去し、常在菌の増殖をできるだけ抑える

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2.PPE(個人防護具)

個人防護具を正しく着用することは、医療従事者と患者を感染から守ることにつながります。血液や体液、損傷した皮膚、粘膜などの湿性生体物質に触れる場合や飛散が予測される場合は、処置ごとに適切な個人防護具を着用し、防御することが大切です。環境整備や医療器具の再生処理の際も適切な個人防護具を着用します。
各処置に応じた個人防護具の着用例を下記に示します。

処置別 個人防護具の着用(例)

手袋 手袋・マスク 手袋・マスク・エプロン 手袋・マスク・ガウン・ゴーグル 手袋・マスク・ガウン・ゴーグル・キャップ

関連サイト

サラヤの医療従事者向けサイト”Medical SARAYA”では、「個人防護具(PPE)のススメ」で個人防護具の解説や処置別の着用例などを紹介しています。

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3.医療器具の再生処理

医療器具は、使用用途に伴う感染のリスクレベルによってクリティカル、セミクリティカル、およびノンクリティカルに分類されます(スポルディングの分類)。クリティカル器具は滅菌、セミクリティカル器具は高水準消毒または中水準消毒以上、ノンクリティカル器具は洗浄または低水準消毒以上の処理を行うことが原則とされています。耳鼻科で使用する医療器具の大部分はセミクリティカルに分類され、中水準消毒以上の再生処理が必要です。

表2 スポルディングの分類と必要な処理

カテゴリー 定義 処理 サラヤ対象商品例 耳鼻科器具・物品
クリティカル
(critical)
通常無菌の組織や血管に挿入されるもの 滅菌
  • アセサイド6%消毒剤
    (過酢酸)(10分間)※
手術器具、穿刺・縫合など観血的な処置に使用される器具 など
セミクリティカル
(semicritical)
損傷の無い粘膜および創のある皮膚に接触するもの 高水準消毒
または
中水準消毒
  • アセサイド6%消毒剤
    (過酢酸)(5分間)※
  • ヤクラックスD液1%
    (次 亜塩素酸ナトリウム)
  • 消エタサラコール(エタノール)
  • 熱水消毒(80℃・10分など)
人工呼吸器、舌圧子、耳用吸引嘴管、鼻用吸引嘴管、ネブライザー など
ノンクリティカル
(noncritical)
損傷の無い皮膚と接触するもの 洗浄
または
低水準消毒
聴診器、ガーグルベースン、膿盆 など
※一部、材質の適合性がないものもあります。

洗浄

医療器具の再生処理を行う際は、消毒・滅菌処理の前にまず十分な洗浄が必要です。一般的に消毒対象物に血液などの汚れが付着していると、消毒薬の効果を減弱させたり、滅菌不良の原因となります。洗浄剤を選定する際は、それぞれの特徴を理解し、材質への影響、汚染物質の種類などを十分考慮する必要があります。中性の酵素系洗浄剤は各種金属やゴム、プラスチックなどに対する腐食性が比較的弱いことから、広い用途で使用可能です。また、皮膚や環境に対する影響が少ないことから用手洗浄におすすめです。アルカリ洗浄剤は皮膚への影響があるため用手洗浄に不向きですが、洗浄力が優れており超音波洗浄機やWDでの使用に最適です。

吸引嘴管の洗浄

管腔のある吸引嘴管は洗浄しにくく、汚染が固着しやすいため使用後はすぐに内腔をすすぎ、汚れを除去して超音波洗浄を行います。汚染がひどい場合は、超音波洗浄を行う前に、40℃・酵素系洗浄剤に20~30分間浸漬して、注射器などを用いて内腔に洗浄剤を数回送り込み器具全体が洗浄剤と接触するようにし、必要に応じて内腔をブラッシングします。

関連サイト

Medical SARAYAでは、吸引嘴管など医療器具の再生処理方法の教育用動画をご用意しています。(会員様専用)

※まだMedical SARAYAの会員でない方はこちらよりご登録ください。


消毒・滅菌

消毒は、消毒薬を用いる化学的消毒法と熱水(80℃・10分など)を用いる物理的消毒法があります。耐熱性のある医療器具の消毒は熱水消毒が第一選択となります。熱水を用いた消毒法は効果的かつ経済的で、消毒薬のように残留毒性を配慮する必要がないため安全な方法です。
滅菌は、オートクレーブ、酸化エチレンガス滅菌、過酸化水素低温ガスプラズマ滅菌、化学的滅菌などがあります。オートクレーブは操作性が高く、残留毒性がないため、滅菌条件に耐えられる医療器具であれば最も安全で確実な方法です。

内視鏡の洗浄・消毒

内視鏡検査による感染の原因の一つに、内視鏡の不十分な再生処理があります。感染の伝播を防ぐために、内視鏡を適切に洗浄・消毒することが大切です。
内視鏡の消毒に用いられる高水準消毒薬は、過酢酸・グルタラール・フタラールです。これらのなかで、過酢酸は最も消毒効果が強力で安全性の高い消毒薬です。
内視鏡は、予備洗浄を行った後、自動内視鏡洗浄装置で洗浄・消毒を行うと効果的です。自動内視鏡洗浄装置を用いると、作業時間の短縮、作業者の感染リスクの軽減、消毒薬の副作用の軽減などが期待できます。

内視鏡の予備洗浄の手順(例)

  • 検査終了直後、内視鏡は光源につないだままで、ガーゼなどで表面を清拭し、チャンネル内を洗浄する
  • 内視鏡を光源から外し、溜水中に浸漬し漏水テストを行う
  • 温水を流しながら、酵素系洗浄剤を用いてスポンジなどで内視鏡外側の汚れを落とし、また、内視鏡の操作部・挿入部を入念に洗浄する
  • 酵素系洗浄剤に浸漬し、チャンネル内をブラッシングする
  • 酵素系洗浄剤が残留しないように各部分を流水で十分にすすぐ

表3 過酢酸・グルタラール・フタラールの特徴

消毒薬 消毒時間
(高水準)
利点 欠点
過酢酸 5分間
  • すべての微生物に有効
  • 芽胞を10分間で殺滅できるなど、強力な消毒効果を示す
  • 刺激臭(酢酸臭)がある
  • 金属腐食性が大きい
グルタラール 30分間以上
  • すべての微生物に有効
  • 器具の材質を劣化させにくい
  • 皮膚や粘膜に付着すると皮膚が着色する
  • 眼や呼吸器系の粘膜に対する蒸気毒性がある
フタラール 5分間以上
  • 器具の材質を劣化させにくい
  • 刺激臭がない
  • 過酢酸やグルタラールに比べ芽胞に対する殺菌力が劣る
  • 皮膚や衣服に付着すると黒く変色する
  • 器具に残留しやすい

耳鼻科用医療器具の取り扱い

菌パックを開封すると無菌性が破綻するため、滅菌された耳鼻科用医療器具は滅菌パックに入れたまま保管し、使用時に開封することが理想です。滅菌パックから耳鼻科用医療器具を取り出し、ユニット上に並べる際は、滅菌手袋を着用して、滅菌された布類の上に器具を並べ、間接喉頭鏡・綿棒などは患者の粘膜に接する部分に触れないように滅菌されたケッテルに立てます。
ユニット上に並べた耳鼻科用医療器具を取る際は、できるだけ患者の粘膜に接する部分や他の器具に触れないように気をつけましょう。例えば、耳鏡架から耳鏡を取る際は、隣の耳鏡に触れないように注意します。

表4 主な耳鼻科用医療器具の再生処理方法(例)

手術器具、異物鉗子、生体鉗子

1.洗浄

  • 超音波洗浄
  • WD洗浄
  • 用手洗浄※

2.乾燥

3.滅菌

  • オートクレーブ
※鋭利な医療器具は切創防止のため用手洗浄よりもWDの使用が望ましい。

内視鏡

1.予備洗浄

  • 用手洗浄(ブラッシング)

2.洗浄・消毒※

  • 内視鏡自動洗浄装置による洗浄・消毒(グルタラール・過酢酸・フタラール)

3.乾燥

※内視鏡は構造が複雑で、洗浄・消毒が不十分になる可能性があるため、内視鏡自動洗浄装置を使用。

耳用吸引嘴管、鼻用吸引嘴管※、舌圧子

1.洗浄

  • 超音波洗浄

2.消毒

  • 熱水消毒(80℃・10分)

3.乾燥

※吸引内容物で閉塞した耳用吸引嘴管・鼻用吸引嘴管は、内腔のブジーや水道水での内腔のフラッシュをまず行うことが必要。

超音波ネブライザー関連器具(マウスピース、吸入ホース、薬液カップなど)※

1.洗浄

  • 用手洗浄

2.消毒

  • 熱水消毒(80℃・10分)
  • 0.1%次亜塩素酸ナトリウムに30分以上浸漬後、十分すすぐ

3.乾燥

※患者間では共用せず、同一患者でも24時間ごとに交換。  
  本体の水は24時間ごとに交換し、よく乾燥させる。
  やむをえず共用する場合は、逆流防止弁付きのマウスピースや逆流防止管付きの鼻管などを患者ごとに用意する
  のが望ましい。

ジェット式ネブライザー関連器具

1.洗浄

  • 超音波洗浄
  • WD洗浄
  • 用手洗浄

2.消毒

  • 熱水消毒(80℃・10分)
  • 0.1%次亜塩素酸ナトリウムに30分以上浸漬後、十分すすぐ

3.乾燥

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4.環境衛生

環境衛生の基本は清掃です。微生物は環境を介して伝播する可能性があるため、環境表面の清掃・消毒を行うことが重要です。吸入毒性などの問題から高水準消毒薬を用いた環境消毒は不要です。血液もしくは体液による汚染がある場合は、汚染局部の清拭除去及び次亜塩素酸ナトリウムによる消毒を行います。
特に、手指の高頻度接触面はあまり触れないところより頻回に清掃・消毒すること、そして手指衛生を徹底することが大切です。

環境表面に使用する薬剤

環境表面に対して使用する薬剤は、洗浄効果、除菌効果、手間、コストなどを考慮して適切なものを選びましょう。
除菌洗浄剤(サラヤ環境清拭クロスプロベスト)は、洗浄効果と除菌効果を併せもつため、薬剤を使い分ける手間やコストを考慮すると実用的です。一方、アルコール製剤(サラヤエタノールクロス80サニクイック)は、洗浄効果はありませんが、速乾性がある・残留毒性がない・抗菌スペクトルが広いなどの特徴があり、直接体表が触れるものや早く乾燥すると便利なものの消毒に適しています。また、不衛生になりがちな清掃用具(雑巾等)の洗濯や管理の手間を考慮すると、除菌洗浄剤やアルコール製剤を含浸させた使い捨ての不織布(サラヤ環境清拭クロスアルガーゼ)が衛生的で便利です。

表4 環境表面と使用薬剤(例)

環境表面 サラヤ対象製品
コンピューターのキーボード、マウス など
スリット台、診療台、医療機器、ドアノブ、電気のスイッチ、引き出しの取っ手、イス など

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5.メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)対策

急性副鼻腔炎の起炎菌である黄色ブドウ球菌中のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の比率は幼小児で若干増加傾向にあるとされています。
MRSAはメチシリンに代表されるペニシリン、セフェム系などのβ-ラクタム系抗菌薬の多くに耐性を示す黄色ブドウ球菌です。消毒薬抵抗性は高くないとされていますが、低水準消毒薬の場合、常用濃度・短時間では抵抗性が報告されています。MRSAは環境中で比較的長く生存し、接触感染で容易に拡がるため注意が必要です。これまでドアノブ、パソコンのキーボードなどを介してMRSAが伝播した事例が報告されています。感染の拡大を防ぐために、手指衛生はもちろん、手指の高頻度接触面を重点的に消毒することが大切です。

表6  MRSAに効果的な消毒

  消毒薬 サラヤ対象商品例 備考
手指 アルコール手指消毒剤 80%エタノール含有速乾性手指消毒薬が有効
※ただし十分な擦り込み時間が必要
器具 グルタラール   消毒後、十分なすすぎが必要
フタラール   消毒後、十分なすすぎが必要
過酢酸
  • アセサイド6%消毒剤
消毒後、十分なすすぎが必要
次亜塩素酸ナトリウム
  • ヤクラックスD液1%
残留性は低いが、消毒後、十分なすすぎが必要
エタノール
  • 消エタサラコール
エタノールで清拭する
熱水消毒   器具の耐熱性に注意する
環境 次亜塩素酸ナトリウム
  • ヤクラックスD液1%
消毒対象の材質劣化に注意する
エタノール 広範囲に使用しない
第四級アンモニウム塩 残留性に注意する

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6.耳鼻科医院におけるサラヤ商品のご提案

院内に衛生用品を設置する場合は人の動線を考え、効率のよい配置と収納を工夫する必要があります。
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受付・待合室


トイレ
診察室
手術室

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7.参考

  • CDC. Guideline for Disinfection and Sterilization in Healthcare Facilities 2008. [PDF]
  • 国立感染症研究所感染症情報センター
  • 工藤典代 著. 中耳炎、副鼻腔炎. 臨床と微生物, vol.33(6).2006.
  • 重野浩一郎 著. 内視鏡の消毒と管理法. JOHNS vol.26(1).2010.
  • 重野浩一郎 著. 外来での消毒・滅菌. ENTONI vol.113 .2010.
  • 重野浩一郎 著. 耳鼻咽喉科外来の消毒・滅菌. 耳鼻臨床 vol.97(8).2004.
  • 重野浩一郎 著. 診療所でのリスクマネジメント. 耳喉頭頸 vol.81(6).2009.
  • 小林寬伊 編集. [新版]消毒と滅菌ガイドライン. へるす出版, 2011.
  • 伏見了,島崎豊,吉田葉子 著. これで解決!洗浄・消毒・滅菌の基本と具体策. ヴァンメディカル,2008.
  • 藤田直久 編. ICTがおさえておきたいMRSA対策のすべて. INFECTION CONTROL vol.161.2007.