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ノロウイルスのABC これからの季節の感染対策を今から準備しましょう!
ノロウイルスとは
ノロウイルスは感染性胃腸炎や食中毒の原因となります。ノロウイルスは感染力が強く10~100個の少量のウイルスで感染が成立します。潜伏期間は24~48時間で急性胃腸炎を起こします。通常は3日以内に軽快しますが、回復後もふん便中にウイルスが排泄されるので、1週間程度は注意が必要です。
ノロウイルスはエンベロープがなく、消毒薬に対する抵抗性は比較的高いと考えられますが、不活化する方法としては、85℃・1分間以上の加熱及び次亜塩素酸ナトリウムによる消毒が有効です。ノロウイルスにはワクチンがなく、治療は輸液などの対処療法に限られるため、感染対策による予防が重要です。

●ノロウイルス感染の集団発生

ノロウイルス感染は1年を通して発生が見られますが、例年冬期に流行のピークを迎える傾向があります。

国立感染症研究所 IDWR(感染症発生動向調査 週報)2016年第34週 感染性胃腸炎

●ノロウイルスの特定の難しさ

ノロウイルスは培養細胞及び実験動物で増やすことができないことから、ウイルスを分離して特定することが困難です。特に食品中に含まれるウイルスを検出することが難しく、食中毒の原因究明や感染経路の特定を難しいものとしています。

●感染症法での取り扱い

5類感染症に位置づけられた「感染性胃腸炎」の一部として、全国の定点(約3000ヵ所の小児科の病院または診療所)からノロウイルスの感染が報告されています。

●海外におけるノロウイルス感染

ノロウイルスは世界中に広く分布しているとされ、アメリカ、イギリス、ニュージーランド、オーストラリア、フランス、スペイン、オランダ、アイルランド、スイスなどでヒトへのノロウイルスの感染が報告されています。
感染経路
ノロウイルスの感染経路はほとんどが経口感染で、次のような感染様式があると考えられています。

●経路Ⅰ:汚染された牡蠣等の二枚貝からの感染

ノロウイルスを含むふん便・嘔吐物が下水を通して河川や海へ排出され、牡蠣等の二枚貝にウイルスが蓄積される。その汚染された牡蠣等の二枚貝を生あるいは加熱不十分で食べることによる感染。

●経路Ⅱ:食品取扱者からの伝播

ノロウイルスに感染した食品取扱者(食品製造に関わる者、調理従事者等)が手指衛生が不十分なまま調理をすることによって食品が汚染される。その汚染された食品を食べることによる感染。

●経路Ⅲ:ふん便や嘔吐からの伝播

ノロウイルスが大量に含まれるふん便や嘔吐物の処理の際に手指に付着したウイルスによる二次感染。あるいは、不適切な処理により残ったふん便や嘔吐物が乾燥して空中に舞い、ヒトに感染。
医療施設における感染対策
標準予防策の実施
ノロウイルスの感染が確定している場合や疑われる場合は標準予防策に加えて接触予防策を追加。

表 ノロウイルスの消毒例

消毒対象 消毒方法
手指
  • 石けんと流水による手洗い
  • ※一般的なエタノール製剤の効果は不十分なため、石けんと流水による手洗いで物理的に
    除去することが重要。
  • ※ノロウイルスへの効果が期待される製品もあります。
汚染器材
  • 洗浄後、滅菌(オートクレーブ等)
  • 洗浄後、熱水消毒(80℃・10分間)
  • 洗浄後、過酢酸に5分間または10分間浸漬
  • 洗浄後、0.1%次亜塩素酸ナトリウム(塩素濃度1000ppm)に30分間以上浸漬
吐物や便で汚染された
環境表面
  • 汚物をペーパー等で取り除いた後、0.1%の次亜塩素酸ナトリウム
    (塩素濃度1000ppm)で清拭
  • 汚物をペーパー等で取り除いた後、アルコールで2度拭き
ベッドパン(便器)
  • フラッシャーディスインフェクター(90℃・1分間等の蒸気)
  • 洗浄後、0.05~0.1%次亜塩素酸ナトリウム(500~1000ppm)へ30分間浸漬
床頭台、
オーバーテーブル
  • 0.1%次亜塩素酸ナトリウム(塩素濃度1000ppm)で清拭
  • アルコールで清拭
洋式トイレの便座、
フラッシュバルブ、
水道ノブ、ドアノブ
  • 0.02~0.05%次亜塩素酸ナトリウム(塩素濃度200~500ppm)で清拭
  • アルコールで2度拭き
リネン
  • 下洗い後、熱水洗濯(85℃・1分間または80℃・10分間)
  • 下洗い後、0.05~0.1%次亜塩素酸ナトリウム(塩素濃度500~1000ppm)
    へ30分間浸漬
食器
  • 洗浄後、熱水消毒(85℃・1分間または80℃・10分間)
その他
  • 食材は洗浄後、中心部が75℃で1分間以上(二枚貝等ノロウイルス汚染のおそれがある食品は85~90℃で90秒以上となるように加熱

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【参考】
1) 厚生労働省. ノロウイルスQ&A. 【PDF】
2) 国立医薬品食品衛生研究所. 平成21年度ノロウイルスの不活化条件に関する調査報告書【PDF】
3) 国立感染症情報センター
4) 丸山務 監修.ノロウイルス現場対策. 幸書房 2006.
5) 西尾治・古田太郎. 現代社会の脅威!!ノロウイルス. 幸書房 2008.
6)矢野邦夫, 他 訳・編. 改訂2版医療現場における隔離予防のためのCDCガイドライン. メディカ出版 2007.
7)小林寬伊 編集. [新版]消毒と滅菌ガイドライン. へるす出版, 東京, 2011.
8)CDC. Updated Norovirus Outbreak Management and Disease Prevention Guidelines. MMWR 2011; 60 (RR-3) 1-20.【PDF】
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